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ファンメイド動画1本が、任天堂の「モンスター捕獲」特許を止めた

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年7月20日 更新
ファンメイド動画1本が、任天堂の「モンスター捕獲」特許を止めた

2013年6月にYouTubeへ投稿された、非公式のファンメイド3Dポケモンゲーム動画。
この10年以上前の1本が、任天堂・株式会社ポケモンが出願していた「モンスター捕獲」特許の拒絶理由として引用されました。
タッチスクリーン上でモンスターに投擲物(投げつけて使う道具)を放って捕まえる、あの馴染み深い操作にまつわる特許です。
ポケットペアの『パルワールド』を相手取った特許侵害訴訟のさなかでの出来事だけに、Xでは驚きの声が広がっています。
パルワールドや訴訟の行方が気になっている人にとっては、今後の裁判の流れを読むうえでも見逃せない展開です。

先に結論をまとめると:
– 任天堂・ポケモン社の「モンスター捕獲」特許(出願番号2026-019762)が、日本特許庁により拒絶された
– 決め手は、2013年投稿の非公式ファンメイド動画が「進歩性なし」の根拠として引用されたこと
– 任天堂は著作権侵害を理由に反論したが、特許庁は「著作権と進歩性は別問題」として退けた

Xで広がった「まさかファンメイド動画が」という驚き

事の発端をXで伝えていたのは、企業ニュースを扱う「製造業24時」アカウントの投稿でした。

投稿の要点はシンプルです。
任天堂が出願していたポケモン関連の「モンスター捕獲」特許が、特許庁に拒絶された。
そして、パルワールド訴訟における任天堂側の優位性が揺らぐ可能性がある、というものでした。
数字や図面の説明はなく、この一文だけでも十分にインパクトがあります。
ただ、これだけでは「なぜ拒絶されたのか」「ファンメイド動画がどう関係するのか」までは分かりません。
一次情報にあたって、拒絶の中身を確認してみました。

そもそもどんな特許を出願していたのか?

問題になっているのは、出願番号2026-019762として申請されていた分割出願です。
分割出願とは、もとの特許出願の一部を切り出して別の出願として申請し直す手続きのことで、権利範囲を整理し直す際によく使われます。
今回の出願内容は、タッチスクリーン上でモンスターに向けて投擲物を投げ、命中すれば捕獲が成立する、というモバイル・携帯機向けのゲーム操作に関するものでした。
『ポケモンGO』はもちろん、スマートフォン向けの多くのモンスター育成・捕獲ゲームで見覚えのある操作感です。

任天堂・ポケモン社は2024年にポケットペアを相手取り、『パルワールド』が複数の特許を侵害していると提訴しています。
現在も係争中のこの訴訟に関連して、任天堂側は主張の武器となる特許を複数出願してきました。
今回拒絶されたのは、そのうちのひとつです。

なぜファンメイド動画が「先行技術」になったのか?

2026年4月、日本特許庁(JPO)はこの出願に拒絶理由通知を出し、その後正式に拒絶査定を下しました。
理由は「進歩性の欠如」です。
進歩性とは、既存の技術と比べて十分に新しい工夫があるかどうかを判断する特許審査上の基準で、単に「実現できている」だけでは足りず、「その分野の専門家が容易に思いつけない程度の独自性」が求められます。

決め手として引用されたのが、2013年6月にYouTubeへ投稿された「Pokemon Generations – 3D Indie Pokemon Gameplay」という動画でした。
これはファンが個人的に制作した非公式の3Dポケモンゲームで、3D空間でモンスターに投擲物を投げて捕獲するという操作が、任天堂の出願より10年以上前にすでに映像として公開されていたことになります。
特許庁の視点では、「この操作方法はすでに世に出ていた発想であり、任天堂の出願にことさら独自の新しさがあるとは言えない」という判断です。

さらに特許庁は、この動画だけでなく『ARK: Survival Evolved』や『モンスターハンター4』、ポケットペア自身の過去作『Craftopia』、そして『ポケモンGO』も同様の捕獲・切り替えシステムを持つ先行技術として挙げています。
任天堂側の出願は、これだけ多くの前例に囲まれた技術だったというわけです。

「著作権侵害だから証拠にならない」は通用するのか?

任天堂側はここで、興味深い反論を試みています。
「このファンメイド動画はポケモンの著作権を侵害しているものであり、証拠として不適切だ」というものです。
感覚的には筋が通っているように聞こえるかもしれません。
無許諾で作られた動画を、正式な審査の証拠に使っていいのか、という主張です。

ところが特許庁の判断は明快でした。
著作権侵害の有無と、その技術に進歩性があるかどうかの判断は別問題だとして、この反論を退けています。
つまり「その動画を作ったこと自体が違法かどうか」と、「その動画に映っている操作方法が世の中に存在していたかどうか」は、まったく別の話だということです。
極端に言えば、違法に公開された映像であっても、そこに映っている技術的なアイデアが既に世に出ていた事実は消えません。
この線引きは、特許審査という制度が「誰の権利か」ではなく「その技術は本当に新しいのか」だけを機械的に見ていることを示しています。

海外メディアDexertoも「任天堂のパルワールド訴訟に痛手、ポケモンの『クリーチャー捕獲』特許が日本特許庁に拒絶された」と報じています。

パルワールド訴訟にどう影響するのか?

Steam同時接続ピーク85万人超を記録するなど、正式版リリース後も勢いを見せる『パルワールド』。
その裏で、任天堂・ポケモン社が訴訟の武器としてきた特許のひとつが崩れたことは小さくない意味を持ちます。
今回の特許は、任天堂側がパルワールド訴訟で主張している複数の特許ファミリー(同じ発明を元に派生させた関連特許群)のうちのひとつであり、この拒絶が直ちに訴訟全体の帰趨を決めるわけではありません。
ただし、報道によれば今回の拒絶は任天堂側の立場に影響する可能性があるとされています。

なお、任天堂・ポケモン社にはまだ手段が残っています。
特許庁の拒絶査定に対して審判請求(不服申立て)を行うことが可能で、これで話が終わるわけではありません。
審判で判断が覆る可能性もあり、今後も目が離せない展開が続きそうです。

Shiritomo GAME編集部の考察:進歩性という壁は、ファン活動と表裏一体である

今回の一件が興味深いのは、任天堂ほどの企業が出願した特許を止めたのが、公式のライバル企業ではなく、10年以上前にひとりのファンが趣味で作った動画だったという点です。
ゲーム業界では、ファンメイド作品はしばしば著作権侵害として削除・警告の対象になりますが、今回のケースはその同じファン活動が、思わぬ形で特許審査の証拠資料として「生き残っていた」ことを示しています。
特許制度は公開された情報であれば出所を問わず先行技術として扱う仕組みであり、YouTubeという誰でもアクセスできるプラットフォームに何かを投稿する行為が、権利関係の思わぬところで影響力を持つことがあるわけです。
ゲームのメカニクス(操作の仕組み)を特許で守ろうとする動きは近年の訴訟でたびたび見られますが、「投げて捕まえる」のような直感的な操作は、それだけプレイヤーの間で自然発生的に類似アイデアが生まれやすいジャンルでもあります。
プレイヤー体験としてしっくりくる操作ほど、権利化のハードルは高くなる。
今回の拒絶は、そんな逆説を示す事例として記憶されそうです。

まとめ

任天堂・ポケモン社の「モンスター捕獲」特許は、10年以上前のファンメイド動画を先行技術として引用され、日本特許庁に拒絶されました。
著作権と進歩性を切り分けた特許庁の判断は、パルワールド訴訟における任天堂側の立場にも影響し得るとされています。
ただし審判請求の道は残っており、決着はまだ先になりそうです。

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