フィギュアを手で仕分けする店員の動画に687いいね——吉野家×ドラクエコラボが「炎上」から「公式対応の教科書」に変わった理由
「箱ごとに入荷されるフィギュアを、配布用の容器に移し替えていた際に、同型の手触りが連続したため」。
吉野家の広報部がSNSで拡散した動画についてこう説明したのは、2026年7月21日のことでした。
笹塚の店舗で店員がドラクエコラボの景品を手に取り、仕分けているように見える動画が拡散し、20万件超のインプレッションとともに「横流しでは」という憶測を呼んでいたのです。
SNS運用担当者にとって、これは「疑惑が拡散した直後に企業アカウントがどう動くべきか」を考える格好の事例になります。
先に結論をまとめると:
– フィギュアの出現率偏りへの不満が先にあり、「仕分け動画」はその不満を裏付ける”証拠”として拡散した
– 吉野家は疑惑発生から短時間で経緯を説明し、転売関与を明確に否定する公式対応をとった
– 一方でフリマアプリでの実際の転売は止まっておらず、公式説明と現場の体感にはズレが残っている
Xでの盛り上がり
発端は、吉野家とドラゴンクエストウォークのコラボキャンペーンで配布されているフィギュアです。
「どんぶりスライム」を筆頭に、特定の種類ばかり当たる・当たらないという声がSNS上で相次いでいました。
そこに追い打ちをかけたのが、店員がフィギュアを手に取って選別しているように見える動画でした。
ライブドアニュースが報じたこの一件は、20万件を超える表示回数を集めています。
【回答】吉野家、ドラクエコラボの景品「仕分け」動画がSNS拡散 “転売”の憶測否定https://t.co/SmLOMNvp1B
吉野家の広報部は、「箱毎に入荷されるフィギュアを配布用の容器に移し替えていた際に、同型の手触りが連続したため、偏らないように内容を確認して移し替えていたための行為」だと回答した。 pic.twitter.com/xXwMylFYVi— ライブドアニュース (@livedoornews) 2026年7月21日
引用ツイートでは「あんな言い逃れできない動画が出てもこれだから、最初から転売対策なんてやってなかったってこった」といった、公式説明に納得しない声も見られました。
ただ、この反応だけでは「本当に横流しがあったのか」「公式の説明は妥当なのか」は分かりません。
そこで一次情報を確かめてみました。
調べて分かったこと
なぜ「仕分け動画」が疑惑を呼んだのか?
背景には、コラボ開始直後からの混乱がありました。
キャンペーンは7月2日にスタートし、複数店舗で数十分から1時間ほどで売り切れる人気ぶりだったといいます。
早期完売が相次いだことで「在庫準備が不十分だったのでは」という批判が先に広がっており、そこにフィギュアの出現率の偏りを指摘する声が重なりました。
「仕分け動画」は、その不満を裏付ける”証拠”として受け取られてしまったわけです。
吉野家の説明は何だったのか?
吉野家ホールディングスの広報部が明らかにしたのは、次のような経緯です。
フィギュアは箱単位で入荷され、それを配布用の容器に移し替える作業が発生します。
その際、同じ種類が連続して入っていることに気づいた店員が、次の来店客に偏りが出ないよう、手触りで種類を確認しながら移し替えていた——というのが公式の説明でした。
転売への関与については、事実は確認されていないと明確に否定しています。
転売の実態はどうなっているのか?
一方で、公式説明だけでは収まらない現実もあります。
メルカリなどのフリマアプリでは、人気の「どんぶりスライム」が3,000〜4,000円前後、その他のフィギュアも1,000〜2,000円程度で取引されているのが確認されています。
吉野家は1来店1食までの購入制限や店内飲食限定といった転売対策を講じていますが、発売直後からフリマアプリへの出品が確認されており、対策と転売のいたちごっこが続いている状況です。
こうした「即完売」「出現率への不満」の構図は今回が初めてではありません。
2024年の「星のカービィ」コラボでも即完売・早期終了が起きており、コラボ景品企画そのものが構造的に炎上と隣り合わせであることがうかがえます。
あんな言い逃れできない動画出てもこれだから、最初から転売対策なんてやってなかったってこった
— うり/多摩のりひこ@Skeb open (@woory_tama) 2026年7月21日
そもそも「転売も客もどうでもよかった」 https://t.co/XgIRUhZQWq
Shiritomo編集部の考察:企業アカウントが試されるのは「炎上した後」
今回の一件が示すのは、企業の公式対応の巧拙は、炎上の有無ではなく「疑惑発生から説明までの速さと具体性」で評価されるということです。
動画拡散から広報部のコメントが報道されるまでの間隔は短く、「箱ごとの入荷」「手触りでの確認」という具体的な作業手順まで開示した点は、単なる「誤解です」で済ませる対応より信頼を得やすい構図でした。
ただし今回は、公式説明が疑惑の一部(横流し)にしか答えられていない点も見逃せません。
フリマアプリでの転売という「体感としての不満」は解消されないまま残っています。
SNS担当者としては、疑惑が複数の論点にまたがっている場合、どの論点にどこまで答えたかを明確に切り分けて発信することが、次の炎上を防ぐ鍵になりそうです。
まとめ
吉野家のドラクエコラボは、フィギュアの出現率不満という下地の上に「仕分け動画」が重なって疑惑化しましたが、迅速な経緯説明によって沈静化に向かいました。
一方で転売そのものは止まっておらず、公式対応の限界も同時に見えた事例だったといえるでしょう。
さらに深掘りしたい方へ
コラボキャンペーンの炎上と公式対応について、詳しい経緯は以下の記事も参考になります。
