「先週の会議って結論出たっけ」――部長のひと言で発覚、AI議事録は3カ月分の半分が創作だった
「先週の会議って結論出たっけ?」。
部長にそう聞かれて、AIがまとめた議事録を見返すと、たしかに結論が書いてありました。
ところが録音を聞き直すと、誰もそんなことを言っていません。
3カ月分の議事録をさかのぼって確認したところ、半分近くが実際にはなかった発言や結論の創作だったといいます。
AIに議事録や要約を任せている人、あるいはこれから任せようとしている人にとっては他人事ではありません。
Xで24,000件を超える「いいね」を集めたこの投稿をきっかけに、AIが「言ってもいないこと」を書いてしまう理由と、実務でどう付き合えばいいのかを調べました。
先に結論をまとめると:
– AIに任せた議事録の要約は、3カ月分のうち半分近くが実際の発言と食い違う創作だった
– 最新の生成AIでも、事実と異なる内容を答えてしまう割合(幻覚率)は22%〜94%とスタンフォード大学の調査で確認されている
– 対策は「鵜呑みにしない」という心がけだけでは足りず、文字起こしとの突き合わせを仕組みにする必要がある
Xで24,000いいね、AI議事録の”創作”を告発した投稿
発端は、エンジニアを名乗るユーザーの投稿でした。
チームの会議はAIに要約させ、議事録として共有していたそうです。
ある日、部長から「先週の会議って結論出たっけ?」と聞かれ、要約を見返すとちゃんと結論が書いてあった。
ところが録音を聞き直すと、誰もそんなことを言っていなかったというのです。
慌てて過去3カ月分の議事録を洗い直したところ、3カ月分の議事録の半分近くが創作だったと報告しています。
議事録をAIに要約させてチームに共有してたんだけど、ある日部長に、先週の会議って結論出たっけって聞かれて。要約を見返したら、ちゃんと結論が書いてあるんだよね。ただ録音を聞き直したら、誰もそんなこと言ってませんでした。三ヶ月分の議事録、半分くらい創作でした。
— 限界エンジニア (@moti256) 2026年9月25日
この投稿は瞬く間に拡散し、「自分も同じ経験をした」「怖くて議事録を人に任せられない」といった声が相次ぎました。
ただ、この数字だけを見ると「AIがひどい」で終わってしまいます。
そこで、生成AIがなぜこうした創作をしてしまうのか、一次情報にあたって確かめてみました。
調べて分かったこと
なぜAIは「言ってもいないこと」を書いてしまうのか?
生成AIが事実と異なる内容をもっともらしく生成してしまう現象は「ハルシネーション(幻覚:AIが事実でない内容を、あたかも事実であるかのように生成する現象)」と呼ばれます。
スタンフォード大学の「AI Index Report 2026」が2026年に公表した最新のベンチマーク(AA-Omniscience)では、26の最先端モデルをテストした結果、幻覚率は22%〜94%とモデルによって大きな差があることが分かっています。
興味深いのは、同じ内容の誤った情報でも、「第三者が信じていること」として提示された場合はモデルが正しく誤りを指摘できる一方、「ユーザー自身が言ったこと」として提示されると精度が大きく落ちる、という報告があることです。
あるモデルは前者では98.2%の精度だったのに、後者では64.4%まで下がったとされています。
会議の議事録は、まさに「誰が何を言ったか」を扱うタスクです。
この報告がそのまま今回のケースの原因と断定はできませんが、AIが「発言の再現」を苦手としやすい傾向とは重なって見えます。
生成AIで議事録とか要約とかさせてる人見るたびに鼻で笑ってる。
— 狐りんご (@colorlaboratory) 2026年9月25日
AI幻覚(デタラメを吐き出す事)に関する研究論文とかもう二桁は出てるけど、%はここ数年変わらす高い。
この前出たスタンフォード大の調査報告書では26の先端モデルをテストしたら幻覚率は22%~94%と。https://t.co/FzLPxaYlVn https://t.co/3lKuC5uOXO
海外でも同じような報告はあるのか?
議事録・要約系のAIツールのレビューでも、似たような指摘が見られることがあります。
参加者が「2週間後にフォローアップしましょう」と発言した内容を、AIが「木曜日にフォローアップを予定」と具体的な曜日まで作り込んで要約してしまうような例も報告されているようです。
存在しない固有の日付や数字を、もっともらしく足してしまう挙動のようです。
この手のツールはOtter.aiやFireflies、Google MeetのAI要約機能など各社から提供されていますが、いずれも同じ大規模言語モデルの仕組みの上に成り立っているため、根本的な弱点は共通していると考えられます。
議事録をAIに任せるとき、何に気をつければいいのか?
すでに実務でAI議事録を使っている人からは、具体的なチェック手順を提案する声も上がっていました。
・文字起こししろ
— 東風谷さずりん (@Xatz) 2026年9月25日
・発言内容に忠実に議事録を書け。決定したことと検討中のことは明確に分けろ
・議事録が文字起こし内容から逸脱していないか、抜け漏れがないか確認しろ
の3ステップやらないとまあ何かしらトチってる。 https://t.co/L1fwpv4Bbg
この投稿が示すように、①文字起こしをする、②発言内容に忠実に議事録を書かせる、③決定事項と検討中の事項を明確に分けさせる、④文字起こしからの逸脱や抜け漏れがないか人が確認する、という手順を踏まないと「何かしらトチる」というのは、多くの現場に共通する実感のようです。
反応の中には「誰も言ってないことが記録として残るとそれは嘘になってしまうよな」という指摘もありました。
誰も言ってないことが記録として残るとそれは嘘になってしまうよな。AI要約依存の罠。考えろ、自分で考えろ。頭はちゃんと使え。バカになるぞ。 https://t.co/YhVLYX2Qbk
— 黒猫†フランベルジュ (@ayakasi_k39) 2026年9月25日
会社で「chatgpt学習オフ」のような設定を確認する人が多いのと同じで、AI議事録についても「使う前に何を確認すべきか」を先に決めておく方が安全です。
具体的には、AI要約を鵜呑みにしないという心構えだけでなく、(1)決定事項が絡む部分は元の録音か文字起こしを必ず確認する、(2)重要な会議ほどAIの要約をそのまま関係者に転送しない、(3)定期的に一部の議事録を抜き打ちで文字起こしと突き合わせる、という3点をルール化しておくと、今回のような「気づいたときには3カ月分」という事態を避けやすくなります。
Shiritomo編集部の考察:明日からやることは2つ
SNS運用やマーケティングの現場でも、AIが作った要約やレポートをそのまま社内共有・社外発信に使う場面が増えています。
今回のケースが怖いのは、議事録という「社内向けの記録」で起きた創作が、そのまま外部向けの発信物に紛れ込みかねない点です。
例えば、AIがまとめた「意思決定の経緯」をプレスリリースやSNS投稿の下敷きにしていた場合、創作された結論が対外的な発言として独り歩きするリスクがあります。
明日からできることは、①AIの出力を「最終稿」ではなく「たたき台」として扱い、必ず人が最終確認する担当を決めておくこと、②数字や決定事項など、後から覆すと信用を損なう内容は、AI要約に載る前の一次情報(録音・原文)を保管しておくことです。
どちらも手間はわずかですが、効くのは事故が起きた後ではなく起きる前です。
まとめ
AIに議事録を任せる便利さの裏側には、もっともらしい創作が紛れ込むリスクが常にあります。
数字が出てから疑うのではなく、最初から「AIの要約は検証が要る前提」で運用することが、結局いちばんの近道になりそうです。
さらに深掘りしたい方へ
幻覚率のベンチマークの詳細は、スタンフォード大学「AI Index Report 2026」で公開されています。


